高等教育質保証学会 第1回大会
新しい質保証を目指して
高等教育質保証学会 会員の皆様へ
厳しい残暑が続いておりましたが、漸く秋色が感じられるようになりました。高等教育質保証学会会員の皆様におかれましては、益々ご活躍のこととお慶び申し上げます。
東北地方太平洋沖地震、さらに台風・大雨により被災された方々に心からお見舞い申し上げます。被災地の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
昨年8月に発足いたしました高等教育質保証学会の第一回大会を開催するにあたり、 前田早苗先生(千葉大学) に実行委員長をお願いいたしました。そして、10月27・28日に東京大学 数理科学研究科棟(駒場キャンパス)で第一回大会を開催する準備が整いましたので、ご案内申し上げます。
当初は、8月下旬に大会を開催する案を皆様にご提案することになっておりました。ところが、大震災により、大変多くの方々が被災され、また東京電力の計画停電のために8月には大幅な電力使用制限が予想される状況となりました。このような想像を絶する事態にあたり、上記のとおり、10月27・28日に東京地区で開催することになりましたことは、前田早苗実行委員長はじめ関係者の皆様のご尽力の賜物と感謝する次第です。
大会の基調講演は、Dr. Dirk Van Dammen (OECD, Head of SERI)にお願いいたしました。また、先端研究セッション、三評価機関セッション、事例研究セッションを設けました。各セッションとも、参加者の方々が積極的に討論できるように、ラウンドテーブルディスカッションの時間が設けてあります。「高等教育の質保証」は新しい分野です。この新しい分野を育てるために、皆様の積極的なご意見を期待しております。
高等教育質保証学会会長
川 口 昭 彦
実行委員長より
はじめに、東日本大震災で被災された方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。また、今年は、その後も度重なる台風による水害で多くの方々が被害に遭われました。まだ各地で予断を許さない状況が続いています。併せてお見舞い申し上げます。
このような状況のなかで、改めて大学はどのような役割を果たすべきなのか、どのような人材の育成を目指すべきなのか、社会との連携が求められている今日、また新たな課題が提示されているように思います。
さて、2010年8月に設立された学会の記念すべき第1回大会を開催することとなりました。
高等教育において、その質の保証は、世界共通の最重要課題であるといっても過言ではありません。高等教育への進学率の上昇と学生の多様化、高等教育への公的財政支出の拡大等々が、社会の高等教育の質への関心をいやがうえにも高めています。
このように質保証は、大学関係者なら誰にとっても無関心ではいられない課題でありながら、そもそも「質」とは何なのか、「保証する」とは具体的に何をどうすることなのかといった基礎的な研究が、十分に展開されているとは言えません。
「質保証」の学問分野としての確立と、研究成果の共有・発信といった高等教育質保証学会の設立趣旨を踏まえ、本大会は、基調講演、先端的研究、認証評価機関セッション、事例研究という4つの構成をとりました。基調講演以外は、どのプログラムも参加者のラウンドテーブルディスカッションの時間を設けており、教員と職員が同じテーブルで質保証という難問について大いに議論していただきたいと考えました。また、3つの認証評価機関からは、認証評価業務を離れて、大学の質保証への取り組みを支援するという視点から話題を提供いただき、率直な意見交換の場としたいと考えています。
そのような積極的な議論と交流を通じて、独自の学問分野としての課題の自覚と方法意識とが生まれてくることを期待しています。
当初、第1回大会は、8月に開催を予定していました。しかし計画停電、節電などの様々な状況を考慮して、10月の開催にいたりました。授業期間中の平日開催となりましたが、ご理解いただければ幸いです。
第1回という記念すべき大会に、できるだけ多くの方がたのご参加を得て、質保証について様々な観点から考えることのできる実り多き機会になればと期待しています。
高等教育質保証学会第1回大会実行委員長
前 田 早 苗(千葉大学)
プログラム
実行委員会 | |
実行委員長 | 前田早苗 |
実行委員 | 大塚雄作・小野宏・栗田佳代子・齋藤聖子・関口正司・秦敬治・森利枝 |
[プログラム] 10月27日(木) | |
10:00 | 受付開始 |
10:30-12:00 | 基調講演 OECD Head of CERI (Centre for Educational Research and Innovation) Dr. Dirk Van Damme Q&A |
(12:10-13:00 評議委員会) | |
13:00-14:00 | 総会 |
14:00-14:20 | ― 休憩 ― |
14:20-16:20 | [セッション1:先端的研究] セッション長:大塚雄作 ファシリテータ:栗田佳代子・斎藤聖子 |
14:20-15:00 | 先端的研究発表(パラレルセッション) |
<セッションA>: [分野別参照基準の考え方―日本学術会議の作業にかかわって] 日本大学 文理学部 教授 広田照幸 <セッションB>: [高等教育開発の理念と方法] 国立教育政策研究所 高等教育研究部 研究総括官 川島啓二 | |
15:00-15:10 | ファシリテーター概説 |
15:10-15:50 | ラウンドテーブルディスカッション |
15:50-16:20 | 各テーブル発表 発表者コメント |
16:40-18:40 | 情報交換会 |
10月28日(金) | |
9:00-12:00 | [セッション2: 三評価機関(大学基準協会・大学評価・学位授与機構・日本高等教育評価機構)セッション] セッション長:工藤潤 ファシリテータ: 栗田佳代子・斎藤聖子 |
9:00-10:00 | [効果的な内部質保証の実現にむけて] 三評価機関による提案 ・ 大学基準協会 大学評価・研究部 部長 工藤潤 ・ 大学評価・学位授与機構 理事 岡本和夫 ・ 日本高等教育評価機構 評価事業部長 伊藤敏弘 |
10:00-10:20 | ― 休憩 ― |
10:20-10:35 | Q&A |
10:35-10:55 | ラウンドテーブルディスカッション |
10:55-11:15 | 各テーブル発表 |
11:15-11:30 | まとめ |
11:30-13:00 | ― 昼食 ― |
13:10-15:40 | [セッション3: 事例研究]: |
13:10 | あいさつ |
13:15-14:05 | 事例発表(合同) [教育の質保証に関する実践的展開と課題 -島根大学と愛媛大学における実践事例の比較から] ・ 愛媛大学 教育・学生支援機構 教育企画室 准教授 山田剛史 [評価・計画・予算の連携による教学マネジメントシステム「 改善アクションプラン」とIR] ・ 明治大学 教学企画部 教学企画事務室副参事 山本幸一 |
14:05-14:10 | ファシリテーター概説 |
14:10-15:40 | ラウンドテーブルディスカッション ※発表者は各テーブルでのディスカッション参加 |
15:40 | 終了のあいさつ |
※発表者のお名前は敬称を略させて頂いております。 ※セッション中のタイムスケジュールは参加人数等により若干変更される可能性があります。 ただし、セッションの開始・終了時刻は変更されません。 |
参加申込
【参加費】 | 正会員・賛助・機関・学生会員は無料 非会員は一般6000円 学生は4000円 ただし、今年度の学会費を支払い、会員になれば無料 非会員で参加申し込みをされた方には参加受付後、学会費の振り込み用紙を同封いたしますので、その用紙を使って10月20日までにお振り込みください。 情報交換会費 事前振り込みは4000円 学生3000円 ※ 当日参加の場合は5000円 |
スピーカー要旨
[セッション1:先端的研究]
<セッションA>: [分野別参照基準の考え方―日本学術会議の作業にかかわって]
日本大学 文理学部 教授 広田照幸
[要旨] 日本学術会議で進めている、分野別参照基準の考え方と基準作成作業の進捗状況を報告し、「質」及び「質の改善・向上」をどう考えたらよいのかについて、問題提起を行いたい。1990年代以降の質保証の試みの現実がもたらした功罪についての、欧米における議論についても触れる予定である。
<セッションB>: [高等教育開発の理念と方法]
国立教育政策研究所 高等教育研究部 研究総括官 川島啓二
[要旨]大学における教育改善の質を担保していくためには、授業改善やカリキュラム開発、組織開発といった領域において、実践に根ざした方法上の研究開発や実践からのフィードバック、専門家の養成、さらには国際的な動向を視野に入れた枠組の構築が必要になってくる。このような活動の基盤となる、高等教育開発の理念と方法について、参加者とともに考えてみたい。
[セッション2: 三評価機関(大学基準協会・大学評価・学位授与機構・日本高等教育評価機構)セッション]
大学基準協会 大学評価・研究部 部長 工藤潤
大学評価・学位授与機構 理事 岡本和夫
日本高等教育評価機構 評価事業部長 伊藤敏弘
[要旨] 高等教育機関の効果的な内部質保証システムの構築を評価機関としてどう支援していくべきかについて、三評価機関から提案を行う。提案後、内部質保証システムとは何か、内部質保証システムを構築するための条件などについてスピーカーを交えてテーブルディスカッションを行い、これからの内部質保証のあるべき姿について考えていく。
[セッション3: 事例研究]
[教育の質保証に関する実践的展開と課題 -島根大学と愛媛大学における実践事例の比較から]
[要旨] 内部質保証システムは,広義には機関としてのPDCAサイクルを担保することであると言えるが,実際には様々な下部システム(内容・レベル等)を包含した複雑な営みによって構成されている。加えて,その実現に向けては当該機関の文脈(規模・セクター・目的等)を踏まえて最適解を探求する必要がある。報告者は,島根大学と愛媛大学2つの「地方」「国立」「総合」大学の「大教センター」で質保証の実践に取り組んできている。本報告では,2大学における質保証に係る取組(特に,組織開発と人材育成,FDとアセスメントの観点から)を俯瞰し,比較検討することで,内部質保証システム構築における実践的課題について浮き彫りにすることを目的とする。
[評価・計画・予算の連携による教学マネジメントシステム「 改善アクションプラン」とIR]
明治大学 教学企画部 教学企画事務室副参事 山本幸一
[要旨] PDCAサイクルを回し,計画的な改善を推進するためには,
PDCAの各要素を結びつける仕組みが必要である。明治大学では,認証評価結果を受けて,計画,予算と一体となったマネジメント支援ツール「改善アクションプラン」を構築した。客観指標を設定しゴールを明確化することで改善を促進するこの仕組みの実践から,IRの有効性や限界,課題について報告する。
10月27日(木)28日(金) 東京大学駒場キャンパス数理科学研究棟